序文


親愛なる読者へ(本書序文より)

実践的なCommon Lisp? 何か矛盾してない? Lisp について、たいていのプログラマなら名前くらい聞いたことがあるだろう。大学のコンピュータサイエンスの授業で習ったのかもしれないし、Emacs をカスタマイズするのにelisp と格闘したのかもしれない。あるいは、Lisp 最強と言ってはばからない友人が周りにいるのかもしれない。

それでもこの本を手に取ったということは、Lisp についてもっと知りたいことがあるはずだ。Lisp を学べばどんな言語でも今よりましなプログラマになれると信じている人もいるだろう。Lispの狂信者が常日頃から声を大にして何を言っているのか知りたいだけの人もいると思う。ひょっとしたら、何かしらLisp を勉強したことはあるけど面白いソフトを書くには至っていない人もいるかもしれない。

どれでもいい。自分に当てはまると思ったら、これはあなたのための本だ。ANSI 標準の業務用Lisp 方言であるCommon Lisp を使って、つまらない教科書の例題やエディタのカスタマイズを越えたすごいソフトウェアを書く方法をお見せしよう。Lisp の機能は他の言語にも多く取り込まれているが、まだまだLisp には奥の手がある。どんな手を隠し持っているのかも紹介していこう。

しかし他の多くのLisp 本で説明されているのに、この本ではまったく触れていないLisp の偉大な機能もある。それらを使うには自分で勉強するしかない。この本でカバーしたのは、現実のプログラムを書くために必要な言語の機能だ。全体の1/3 以上は、統計的スパムフィルタやバイナリファイルをパースするためのライブラリ、データベースとWeb インタフェースを備えたネットワーク上でMP3 をストリーミングするサーバといった、ありきたりでないソフトウェアの開発に割いている。

ページをめくり、史上最も偉大な言語を極めて実用的に使うとどうなるのかを自分の目で確かめてほしい。

Peter Seibel


Last modified : 2008/07/24 01:17:30 PDT